第4回 経営研究・懇談会の開催報告
- 日時 : 平成24年4月15日 18:00~20:45
- 場所 : 産業交流プラザ 3F 第4会議室
- 話題提供者 : 日本電子エンジニアリング(株) 髙橋 榮一代表取締役、管理本部 吉田 塁部長
- 演題: スマートフォン現状と弊社の開発製品
アメリカンスタイルで各自缶ビールを開け、つまみを食べながら開会された。
司会(佐々木副理事長)から、日本電子エンジニアリング(株)(JEE)さんとはYRPベンチャー棟で隣合わせの間柄。また、ISO9001認証取得では、産業クラスターのメンバーが支援した関係との発言があり、高橋さんを紹介された。
髙橋代表取締役の概要紹介
高橋代表取締役は、昭和44年に大学を卒業後、日響電気機械工業(株)(現JBBC(株))に入社され、TOSBAC1100~3400の開発を担当された。当時、パソコンは存在せず、ミニコンの時代であった。記録媒体のテープの保管に広いスペースが必要な時代であった。パソコンが出現するとすぐに置き換わるスピードであった。
その後、昭和52年に独立され、日本電子エンジニアリング(株)を設立された。基板設計業務を主に行っており、設立当初からしばらくの間は手設計で行っていたが、時代と共にパソコンを利用しての設計へ変化していった。平成9年頃、YRPが設立されソフトウェア事業にも少しずつ業務の幅を広げた。ソフトウェア事業では、主に携帯電話の評価業務にYRP情報産業協同組合を通じて人材の提供を行い、移動体通信関連業務に長く携わってきた。その後、携帯電話からスマートフォンに移り、モバイル機器にはパソコンが組みこまれたような機能を持つ機種が増え、ソフトウェア評価に関しては、YRPにいなくても仕事ができる時代になってしまった。その為、ドコモ、パナソニック、ソニー等開発者の流出が起こっている。
現在当社では、携帯電話端末・基地局のソフトウェア開発・評価、各種基板設計、製造等を中心の仕事としている。本日は、最近の開発商品 1)ReborneEX(戦力外となったXPパソコンをサーバーとして復活) 2)監視カメラシステム を紹介すると概要紹介があった。
管理本部部長の吉田さんの講演
演題については、管理本部部長の吉田さんがパワーポイントを使って講演された。
最初に、YRPは横須賀三山に囲まれ、都会などと異なり電波吸収が起こりやすい微弱電波環境(弱電界)、移動体通信機器に対して優しくない場所である。通信技術の研究開発において、そのような自然が作り出すYRPと言う環境は貴重であることの説明があった。その為、YRPは通信技術に関する最先端の研究施設が集積された場所であり、刺激に富み、相互啓発できるビジネス環境という意味では恵まれた場所である。
JEEは、この地に移り、6年が経過した。現在、社員65名で、主な仕事として 1)ドコモ携帯電話端末のソフトウェア開発や評価試験 2)携帯電話基地局の評価試験 3)各種基板の回路設計、製造などを行っている。評価試験はチームを組んでグループで実施することが多く協力して仕事をする必要があることから、資格取得のみならずヒューマン・スキルも育成できるように人材育成にも注力している。
次に本題のスマートフォンの現状について、まず携帯電話の世代概要について紹介された。なお、下記で、GはGeneration、世代を示す。
- 第1G :
- 始めての個人用の無線電話で「携帯電話」という言葉が誕生した。アナログ方式である。
- 第2G :
- デジタル方式となり、iモード、メールの使用が始まった。
- 第3G :
- 国際規格のCDMA方式が採用され、海外でも日本製の携帯電話の利用が可能となった。
- 第3.5G :
- スマートフォンが登場し、通常のWebアクセスがさらに増加。Twitter、SNS、オンラインゲームの影響もあり、通信量が増加したことを受け、通信速度の速いHSPA+を採用している。
- 第3.9G :
- スマートフォンが主流となり、個人の扱うデータ量が爆発的に増加。通信方式はLTEで、通信速度は第一世代の約5100倍で147,000kbpsである。
- 第4G :
- 次世代の技術だが、通信方式は世界規格のLTE-Aが採用され、更なる大容量のデータを扱える時代が来ると期待されている。
次に、日本電子エンジニアリング(株)(JEE)の開発商品して、次の2つを紹介された。
1)RebornEX(XPパソコンの復活利用)
本年4月9日に、マイクロソフトがサービスを停止したOS:XPを搭載した、通称XPパソコンは、ネットワーク環境ではウイルスの脅威で戦力外となった。しかし、JEEでは、これをサーバーとして顧客の要求に応じてカスタマイズして再利用できるサービスを低価格で提供するとのことである。無線LANの環境でファイル共有やホームページなどの情報共有などにXPパソコンを有効に復活利用できる。
2) 監視カメラについて
- ⅰ)一般の監視カメラ:
- ビデオカメラで取得した映像の伝送処理、表示機能を含む監視システムで、用途としては、防犯、防災計測、記録が多い。技術としては、動体検知、パン・チルト・ロール(カメラを左右・上下・回転する)。最新技術として、レーザースキャンセンサ、映像解析技術等が使用されている。しかし、大手企業が販売しているシステムは高価格である。
- ⅱ)JEEが開発した監視システム:
- ・ 監視設定はブラウザで可能
- ・ 動体検知機能を契機に録画開始
- ・ メーカーに依存しないカメラの選択が可能
- ・ 外出先からリアルタイム映像、録画映像の確認が可能、 などの機能を持つ。
- ポイントを絞った利用には、コストパーフォマンスを考慮すると、一般に販売されているシステムと比較し、低価格(20万円~)である。
質疑応答
質疑応答に移り、防犯や防災のニーズは増えており、価格を考慮すると、JEEの開発された監視システムの需要は多いと期待されるが、「販売開始は何時?」 「4月に始めたばかりである。販売先は B to B に限られ、B to Cまでは考えていない。」「広告宣伝は?」・・・。
またスマートフォンに関しては、Gの意味はなど初歩的な質問から、通信電波の人体に対する影響は?等々 活発な質疑や意見交換が行われ、予定時間20時を大幅に超え、20時45分閉会となった。
解説
- 1) CDMA(Code Division Multiple Access):日本語で符号分割多重接続であり、第3世代の携帯電話で扱われている通信方式である。
- 2) HSPA(High Speed Packet Access) は、W-CDMAを拡張した高速パケット通信規格である。
- 3) LTE-A(LTE-Advanced) : LTEとは第3世代を「長期的に進化」(Long Term Evolution)させたもので、そのため一般的には、3.9 Gと呼ばれている。LTE-Aは将来的に登場する第4世代の通信方式のこと。
- 4) B to B : 企業間の商取引、或いは企業が企業向けに行う事業のこと。企業間の物品の売買やサービスの提供、企業と金融機関との取引などがこれに含まれる。
- 5) B to C : B to Cとは、Business to Consumer/Customerの略で、会社から個人消費者へ販売する取引関係を指す。 例えば、家電小売店などは基本的に地域の個人消費者を対象に販売活動を行っていることから、B to Cのビジネスを行っているといえる。