英語の冠詞

外国語で文章を書くとき、ほんの一言が大変な意味の違いを引き起こすことがあります。このコラムは海外事業部会のメンバーが経験をもとに連載します。



英語の冠詞

日本人がいつまでも会得出来ない英語の基本


『日本人の英語』

 私の終生の愛読書『日本人の英語』(マーク・ピーターセン氏-岩波新書1988年初版)に、明治大学で英語の教鞭をとっておられた氏が、日本人大学生がこれさえ身につければ彼らの書く英語が格段にレベルアップするという問題点の第一位として単数・複数と冠詞(a、an、the)の習得を挙げておられました。
 日本語で名詞を話したり書いたりする時には、殆ど気にしない単数・複数の区別ですが、英語では名詞が口をついて出る前には言おうとしている語が単数なのか複数なのか単数ならa(an)なのかそれともtheなのかが頭の中で整理されているということですね。どうもこの英語式の名詞の扱いがうまく機能していないとその英語(らしきもの)を聞いたネイティヴ・スピーカーは、かなり日本人と接してきた経験者でない限り、このような英語を聞いた一瞬思考が停止してうまく話についていけなくなるようです。極々普通の日本語がこの点どのようになっているか試みに新聞のどの記事でもいいですから10行ほどの中に現れる名詞を一つずつチェックして単数か複数か英語ならtheをつけるべき名詞かどうか日本語原文だけで即座にわかるかご覧になって下さい。日本語と英語の根本的な違いがお分かりになることと思います。


25年を経て『実践日本人の英語』

 この「日本人の英語」発行から25年を経て2013年春に、今でも明治大学で教鞭をとっておいでのピーターセン教授が『実践日本人の英語』を刊行されました。25年間で日本人の英語がどの程度進歩してきたかを見たくて、早速愛読書に加えたのですが、その後2013年9月17日の日経朝刊のコラムに先生が最近の大学生の英語をどう思うかと質問され、リスニング・発音は20年前と比べて改善されているが、(その他は改善が進まず)これでは優秀な日本人が仕事で電子メールを送る時も、英語が拙くてもったいない。単数形と複数形を使いこなせなければ、印象は良くない、との意見が載っておりました。何十年にわたり英語、英語と言い続けた日本の英語教育も未だしの感です。


最後の最後に残念を思う

 このようなことを考えている時、ある施設の中の自動水栓の脇に記載された使用法の簡単な説明に目がとまりました。見事!と感心しながら読み終わろうとした最後の最後に誠に残念な思いを致しました。日本語と英語が併記されています。単数、複数、冠詞に注意してご覧になって下さい。

(和文)
手を出すと水が出ます。
(英文)
THIS IS AN AUTOMATIC WATER-TAP
PLEASE PUT YOUR HANDS UNDER SENSOR.

(ZO)


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