「等」などに悩む

外国語で文章を書くとき、ほんの一言が大変な意味の違いを引き起こすことがあります。このコラムは海外事業部会のメンバーが経験をもとに連載します。
「等」などに悩む

 日本語の業務文書、規格、規則、法律文書で「等(など)」の含まれない文章はまずありません。実はこれが大変な翻訳者泣かせです。

 「など」の意味を国語辞書でひいて見ると次の三つが主な用法で、①例としてあげるときのことば(草や木などを)、②そのほかにもあるが、おもなところをとって言う時のことば(死ぬなどと言っている)、③断定をやわらげて言う時のことば(ねこなどはおすきですか)、となっています。皆さんが日本語で「など」と言い、または文中に「等」、「など」と記載するときこの三つのどれであるかを意識されているでしょうか。
 実は、文中に「等(など)」が記載された和文を英訳するとき実に困ることが起こります。和文の筆者の気持ちを推し量りながら英訳を進めるのですが、通常は原稿作成者に確認をとれないことが多いので、上の三つのどれに当てはまるか、文脈から判断しながら勝手に①、②、③のどれかに決めざるを得ません。①と②の場合は、「・・、・・、その他(weeds, shrubs and etc.)」とするか、又は全体を表す言葉を探して「雑草、低木などの植生(vegetation such as weeds and shrubs)」とする方法をとります。ところが「など」が実は③の意味であったり、特に意識することなく「など」がくっついていることが日本語では随分あるようです。丁寧に英訳を進めるとetc.、such as、or the like、and so on が随所に入った native speaker の英語ではまず見掛けない英語になってしまいます。

 しかし日本語での会話、文章に「等」、「など」を使用禁止にしたら日本語は成り立たないでしょうね。国会中継を聞いていても「・・・等」ではおさまらず「・・・等々」が常套語になってしまっています。
 元総務大臣の片山義博氏が2008年に日経夕刊コラムに「(各省庁は)『など』の挿入に死に物狂い」との一文を載せています。例示部分ではなく「など」で解釈される部分が主となることもある訳です。
 言いえて妙ですが、これをどう英語ににじませるか。やはり「等」、「など」は実に翻訳者泣かせです。

(ZO)


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