ウグイスは今も最も愛でられているのであろうか

鶯に誘われてシリーズ

ウグイスは
今も最も愛でられているのであろうか

個人会員 奧谷 出

 ウグイスは古代から愛でられてきた鳥であるが、現在はどうなのであろうか?
 その疑問に一つの解を与えてくれるのではないかと考えて着手したのが、全国の市区町村が制定した鳥についての調査である。如何なる結果を見せてくれるのであろうか。

調査期間

  1. 最初は、平成の市町村大合併の終了に近い平成18年(2006)であったように記憶している。
  2. この間、数回調査をしているが、最後の調査は平成23年(2011)であった。

調査・集計方法

  1. 調査対象の市町村は、Webサイト『市町村コード一覧表』を利用する。本資料は、2018年10月1日公表の総務省地方公共団体コード一覧表に基づいて作成されたものである。
     ただし、東京都の23区は特別区であり、どの市町村にも属さないため、市町村と同等に取り扱うことにした。そのために、市区町村と呼ぶことがある。なお、政令都市の区については調査対象とせず、市として取り扱う。
  2. 原則として、各市区町村のWebサイトを検索して調査する。『ウィキペディア』に記載があったが、各市区町村のWebサイトと相違することがあったので使用しなかった。
  3. 市区町村の概要⇒花木鳥のページを調査する。この表示体系は当初に比べ増えてきている。
  4. その表示体系に沿わず、階層体系が分かりにくい場合、サイト内検索機能を使って花木鳥のページを探す。サイト内検索機能の装備も充実してきたがまだ装備していないWebサイトも見られる。
  5. 上記で見つからない場合、インターネット全体検索機能を使って、対象市区町村の花木鳥のページを探す。議会議事録、広報誌、マンホールの蓋の絵の説明情報にしか記載されていない場合、この方法で検索されることが多い。花木鳥は市区町村のシンボルとして制定するものであるので、分かり易い方法で検索できることが望まれる。
  6. 上記でも見つからない場合、各都道府県で作成している市区町村情報一覧から花木鳥を探す。市区町村情報一覧が存在しない都道府県もあるので要注意である。
  7. 上記でも見つからない場合、『ウィキペディア』の「日本の市町村/シンボルリスト」から花木鳥を探し、採否を判断する。
  8. 上記のいずれでも見つからない場合、未制定とする。
  9. 1つの市区町村で複数の鳥を制定している場合、それぞれの鳥について集計する。
  10. 方言で記載されている場合、標準名に変更して正規化する。
  11. 各鳥の制定数の比率は鳥の総制定数に対する比率とする。

結果について

  1. 調査対象の市区町村は1,741であった。市区町村の鳥を制定した市区町村は全体の約45%である。因みに花や木の制定率は95%を超えている。このことから考えても、鳥を害鳥とみる傾向が反映されたものと思われる。
     
  2. ウグイスは167の市区町村で制定され、鳥の制定数の20.8%を占め、制定率は断トツの一位である。古代から現在まで最も愛でられている鳥であることがわかる
  3. ウグイスは、北海道から九州まで全国的に生息していることが分かる。東北と関東がやや多い。
     
  4. 2位はメジロの67件、8.4%の制定率であるが、ウグイスの4割程度の制定率である。以下、キジ、カワセミ、ヒバリ、セキレイ、ハクチョウ、カモメ、ヤマドリ、カッコウと続く。
     
  5. 『万葉集』や『古今和歌集』などで最も多く詠われていたホトトギスは、2つの市区町村で制定され、0.3%の制定率で47位。夜に絹を裂くような激しい鳴き声をするといわれるホトトギスを現代人は好まないのかもしれない。
     
  6. 鳴き声の美しい三鳴鳥は、ウグイス、オオルリ、コマドリであるが、制定率はどうであろうか?
    オオルリの制定件数は10件、1.3%の制定率で15位。コマドリは9件、1.1%の制定率で19位である。
     鳥の鳴き声は美声だけで聞いているのではないということを示唆しているように思われる。
  7. 仏教の三霊鳥といわれるウグイス(鳴き声は法、法華経)、ジュウイチ(慈悲心)、コノハズク(仏法僧、姿の仏法僧に対して声の仏法僧と呼ばれることがある)はどうであろうか。コノハズクの制定件数は3件、0.4%の制定率で38位。ジュウイチは制定されていない。
     明治維新時の廃物稀釈運動や選択の自由化の影響であろうか? 江戸時代とは大分様相が違うように思われる。
     
  8. 月日星と鳴くサンコウチョウ、イカル、ウグイスはどうであろうか?
     サンコウチョウ、イカルともに制定件数は2件、制定率は0.3%、47位である。サンコウチョウ、イカルは聞きなしごえであるが、ウグイスは奈良の若草山などで仕込んで鳴かせた鳴き声といわれる。
     ウグイスに月・日・星と鳴かせた理由は不明であるが、末法の世ということが強く意識された時代、暗き道を日夜照らすように月・星・日を使ったと考えられる(ウグイスの語源説考)。
     
  9. 美しい青い鳥御三家であるカワセミ、オオルリ、コルリはどうであろうか?
     カワセミの制定件数は41件、制定率は5.1%で4位。オオルリの制定件数は10件、1.3%の制定率で15位。コルリは制定されていない。
     なお、メーテルリンクの青い鳥はキジバトで、制定件数は10件、1.3%の制定率で15位。ウグイスにも春の色は青という陰陽五行説の伝承から青鳥の異名がある。

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