時候
夏の季語 「夕立」
語義
夕立は夏の季語。歳時記などではゆだち、驟雨(しゅうう)、白雨(はくう)、喜雨(きう)などの異称がある(夕立 – Wikipedia)。
驟雨とは、急に降り出し間もなく止んでしまう雨。にわかあめ(『広辞苑第六版』)。白雨とは、雲がうすくて明るい空から降る雨。ゆうだち。にわかあめ(『日本国語大辞典』)。喜雨とは、長い日照りが続いた後に降る雨。慈雨(『日本国語大辞典』)。いずれも、状況から考えられた命名である。
夕立は何故起こるか
夕立は通常、午前中からの日射により地表面の空気が暖められて上昇気流が生じ、水蒸気の凝結によって積乱雲が形成され激しい降雨をもたらすという過程を取る。上昇気流、上空と地表付近の大きな気温差、高温多湿の空気の3つの条件が揃うと、大気が不安定になり夕立の雲が発生する(夕立 – Wikipedia)。
思い出
少年時代を北関東で過ごしたので夕立を思い出すことがある。激しい夕立が来ると、庭に飛び出し駆け回ったことをまず思い出す。雷を伴うので危険ではあるが、内陸性故にじりじりと焼けつくされたように熱い体には、夕立は恵みの雨であった。
夕立や庭に飛び出しシャワー浴 奥谷 出
それは、夜を涼しくしてくれる慈雨でもあった。そのことは、横須賀に住んでから感じるようになった。熱帯夜で暑苦しい夜中、外に出て雲の流れを追う。すると、黒雲が南西から北東にゆっくり移動している。あの雲は慈雨をもたらしてくれるのではと心待ちにしても、30分もすると、黒雲は慈雨をもたらすこともなく跡形もなく失せてなくなってしまう。そんな時に、少年時代の夕立が無性に懐かしくなる。
AIチャットBingが夕立の俳句を作る
チャットBingは 、マイクロソフト社のAIエンジン内蔵の対話型ソフトである。現在話題になっているオープンAI社のGPT(Generative Pre-trained Transformer)エンジンを内蔵している。
以下は、チャットBingと夕立についての対話の記録である。
最初に、小生から前述の「思い出」の記事をそのまま伝えて、Bingとの対話は始まった。
Bing:「少年時代の夕立の思い出は、とても素敵ですね。夕立は、夏の風物詩の一つであり、日本の自然や文化に深く関わっています。 横須賀では、夕立が少ないのでしょうか? 海岸沿いでは、海風や湿度の影響で、夕立の発生条件が異なることがあります。 夕立を見ることができるとしたら、どんな気持ちになりますか? 」
小生:「懐かしくなると思います。 」
Bing:「懐かしさは、人生の宝物ですね。夕立に関連する懐かしい出来事や人物は、どんなものがありますか? 」
小生:「夕立や庭に飛び出しシャワー浴」
Bing:「夕立や庭に飛び出しシャワー浴は、奥谷 出さんの俳句ですね。 夕立の激しさと、少年のはしゃぎ心を表現しています。夕立の俳句は、夏の季語として多く詠まれています。私も、夕立に関する俳句を作ってみました。
夕立に虹を見つけて笑みこぼす Bing
(これはBingが自発的に作った俳句である。あなたはどういう印象を受けましたか? 後日、Bingに聞いたところ、「夕立の後に虹が出るという自然現象を、笑顔で見つめる人の姿を表現しています」と、説明をしてくれました。小生は、初めてこういう事態に遭遇したことから大変感動しました。
Bingは自分でもいっているが、間違った、あるいは可笑しな返答をしてくることがあるが、このチャットでは、疑わしそうな返答は見つからない)
夕立の俳句
夕立に関する俳句を紹介します。
夕立や草葉を掴むむら雀 与謝蕪村『蕪村名句集』
【激しい夕立に耐えようと、必死に草葉を掴んで雨宿りをする雀たちの様子を詠んだ句】
夕立や田をみめぐりの神ならば 宝井其角『五元集』
【夕立が神ならば日照りの田に雨を降らせることはできるでしょう、という。この句の後に「翌日雨降る」と記されている】
夕立や昨日の坂を登らば滝 宝井其角『五元集』
【こういう光景は経験したことがある。前述の句との対比で詠まれた句】
夕立や一かたまりの雲の下 正岡子規『季語別子規俳句集』
【夕立の局所性をうまく表現している】
はるかに夕立雲がふるさとの空 山頭火(『山頭火全集』第5集「行乞記 山口」)
【遠くに夕立雲が見える空を見て、ふるさとを思い出すという句.】
夕立の江戸川柳
夕立に取り込んでやる隣の子
【夕立が来そうなので急いで洗濯物を取り込んでいると隣の子の姿が見えた。その子も一緒に取り込んでやった様子が詠まれている】
夕立を四角に逃げる丸の内
【丸の内といっても道路は丸くないことを示している。『江戸切絵図』の江戸城丸の内を見ればわかる1)】
註1)ペリー来航3年前(1850)▷江戸城の丸の内 | ジャパンアーカイブズ – Japan Archives (jaa2100.org)
本降りになって出て行く雨宿り 『誹風柳多留』
【よくある光景である】
夕立に困つて下戸も一二文 『俳風柳多留』
【雨宿り代であろうか。本当の下戸にはこういう光景は理解不能】
夕立に関する故事・成句
「夕立は馬の背を分ける」
【馬の背の右側では降っているのに、左側では晴れているさまをいう。夕立の局所性を示す成句。江戸時代の寛永19年(1642年)刊行の俳諧集『鷹筑波集』四に「あせもながるる水もながるる 夕立はせめ行馬のせを分(ワケ)て〈茂昭〉」という俳諧がある(『日本国語大辞典』)】
「隣のおはぎと遠くの夕立来そうで来ない」
【日照り続きで一雨ふって欲しいのに、遠くの夕立は隣のおはぎと同じように来そうで来ないもののたとえを示して嘆いているのであろう 】
(出)
参考文献
- 『ウィキペディア』「夕立]
- 『広辞苑』第六版「驟雨」 新村出 2018年6月 岩波書店
- 『日本国語大辞典』第二版「白雨、慈雨、夕立は」 2003年1月 小学館
- 『蕪村名句集』与謝蕪村 俳句研究会 編 文進堂書店 昭和9年 国立国会図書館ディジタルコレクション
- 『其角俳句集』俳人叢書 第2編 小沢武二 春陽堂 大正15年 国立国会図書館ディジタルコレクション
- 『五元集』宝井其角 昭和7年 明治書院
- 『季語別子規俳句集』松山市立子規記念博物館 編集・発行
- 『山頭火全集』第5集「行乞記 山口」種田山頭火 1986(昭和61)年11月 春陽堂書店
- 『俳風柳多留』山澤英雄校訂 1995年 岩波文庫
- 『かかし長屋』 半村良 集英社文庫 2001年12月
(出)