翻訳雑感 -AI翻訳は使えるか-

海外関連事業部会 仲田 清

 我々 海外関連事業部会は現役時代の実務経験を活かし、米軍との取引等、英語を使うビジネスに関わる書類の和訳・英訳や打ち合わせ時の通訳を通じて地元の企業様をサポートしています。

 ビジネス文書では、翻訳の誤りが損失に影響することが多々あります。正しい翻訳には、本文を正しく理解する必要があり、当該分野に対する知見や理解が有効です。海外関連事業部会のメンバーは必ずしも英語のプロではありませんが、現役時代の様々な業種、様々な部門の経験が正確な翻訳に役に立っていると自負しています。

 ところで、近年機械翻訳/AI翻訳ソフトが急速な発展を遂げています。コンピュータの翻訳利用はコンピュータの発展と共に研究され、大量の文章データを統計的に処理する統計的機械翻訳を経て、2015年頃ニューラル機械翻訳の実用化が始まり、翻訳ソフトの質が格段に向上しました。
 私も2015年の前後の違いを実感しました。現役時代の2010年頃にGoogle翻訳を含めいくつかのソフトを業務に利用していました。その当時の翻訳ソフトはいずれも短文なら何とか使える辞書の替わり程度のレベルでしたが、長文を入れると英文にもなっていませんでした。
 それが最近Google翻訳を試しに使ってみると、長文を纏めて入れてもほんの数十秒で英文が出てくるではありませんか。ざっと見には、ちゃんとした英文になっているように見えます。専門用語についても学習する様で、どの様にフィードバックしているのか、何回かやっていると正しい単語を選択するようになりました。

 それでは、もう人間の翻訳は不要なのでしょうか? 和文英訳の文章を細かくチェックして見ましょう。
 「結構やるじゃないか」が最初の印象です。読み進んでいくと文章になっていない箇所が出てきました。原文を見ると入り組んだ構文の文章でした。関係代名詞を上手く使えないようです。更に読んでいくと、なんとなく英文になっているのに、何回読んでも頭に意味が入ってこない文が出てきました。原文を見て納得です。日本語得意のあいまいな表現で、AIも迷った事でしょう。全体として7-8割は訳せている感じですが、残りは英語になっていないと言えます。特に後者の「なんとなく」英文は、注意して読んでいかないと見落とす可能性が高く危険です。正式文書の翻訳には及第点は上げられそうはありません。

結論として、人間の翻訳業はまだ失業しないで済みそうです。

 AI翻訳は確かに便利なツールですが、弱点を理解して補助的な使用に限定するべきかと考えます。例えば、個人での海外旅行やプライベートなコミュニケーションに利用されるといいでしょう。AI翻訳を使う時のヒントです。「正しい翻訳は正しい日本語から。」 翻訳がおかしい時は、元の日本語を修正して見てください。“、”の位置を直すだけでも正しい訳文になることもあります。

以上

 


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