つれずれなるままに
横須賀や
汐入のサポセンまではよく来るが、ここ、ヴェルニー公園まで足を延ばすことはめったにない。久しぶりである。異国情緒の漂うこの景観は、午後の影を落としてはいるが、ヴェルニー公園にはよく似合う。 スナップ写真を撮った後で、右の方へ廻ってみると、一叢のバラの花が見える。
名前は桜木。可憐な花が春から秋まで絶える間もなく咲き続けるという。一重咲きのピンクの花が一斉に咲いた姿は満開の桜を彷彿させるようで、バラの木であるにも拘らず「桜木」という名前をもらっている。
岐阜県での国際バラコンテストで銀賞を受賞していることをみると盛時には桜のように見えるのであろう。俄然来年が楽しみになってきた。
なお、このバラは1996年に日本人が作り出したものだそうである。
対岸、ここは日本の近代産業発祥の地であるが、その跡地に建つ白亜の建物をバックにピンク色のバラの花がまるで花瓶の中で寄り添うようにかたまって咲いている。この時期では、見栄えのする一叢である。
このあたりを歩くことはめったにない。妙に目立つ石碑に目をやると、
- 横須賀や只帆檣の冬木立 子規
の俳句がある。
正岡子規は、明治21年(1888)8月、夏期休暇を利用して、友人とともに汽船で浦賀に着き、横須賀・鎌倉で遊んでいる(Webサイト『横須賀市』正岡子規の句碑)。その年の7月に第一高等中学校予科を卒業し、9月に本科へ進級しているので(『ウィキペディア』正岡子規』)、その間を利用したものと思われる。
句はそのときのものである。横須賀港内に連なる帆檣(はんしょう;ほばしら)の印象を詠んだもので、句集『寒山落木』に収録されている(Webサイト『横須賀市』正岡子規の句碑)。
夏に詠んでいるにもかかわらず、「冬木立」と表現していることから、船の帆柱が林立する様子はよほど強く冬の木立を思わせたのであろう。
(奥谷 出)